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気持ち悪くなった。
お酒を飲むことが気持ち悪い。
よくわからない人たちと話すことが気持ち悪い。
お金を気にして安いものばかり摂取するのが気持ち悪い。
お金の貸し借りがあやふやになるのが気持ち悪い。
愛しい人がいないことが気持ち悪い。
二席分占領して勉強をするアニエス・ベーを着た推定5歳児とその母親が気持ち悪い。
全身おしゃれな女性があえて着たハズしTシャツが気持ち悪い。
運命の出会いを期待して気取る自分が気持ち悪い。
楽しいことがない、心踊ることがない。
気持ちをよくする方法を失った哀しきモンスターことわたくし。
気持ちは誰かが上げてくれるものではないと知っている。
おしゃれな女性の髪ゴムが100円均一にあるアレで、少し愛せると思った。きっと下着も着古したやつだ。
どうでもいい元カレを太らせたような男がセンスの悪い女の子と一緒にいたのも気持ち悪かった。
下手したら本人ではないかと思ったけど、余計気持ち悪くなるので見ないようにした。
老人が「高輪駅はどこですか?」と聞いてきた。高輪駅なんて駅はない。
一緒にいた友人はいい人で、検索をしてあげていた。時間がかかっている。老人は悠然とした態度で親指と人差し指をこねくり回しながら、教えてもらえることは当然だと思って突っ立っている。
人の時間とは。
私は「携帯を持っていないんですか?」と聞いた。彼が自分で検索をしたらすぐわかる話だと思ったからだ。
老人は「持っているけど、私は使い方が分からないから」と断言した。
私は(知らねえよ)と思った。
「高輪駅という駅はありません。高輪台駅ならあるけど歩いたら時間がかかると思います」と友人は言った。
「ああ、じゃあそれでいいです。時間がかかる分にはいいので。どうやっていけばいいんですか」
「この道をまっすぐです」
礼を言って老人は去っていった。私はその時点から気持ち悪かった。
少しすると友人の後輩がきた。
開口一番、友人に「あれ、少し太りましたか?」と言った。失礼だ。
100円均一とピーコックで買い物を終えたところで気持ち悪くなりすぎて、手土産(と言ってもワンコインのやつ)だけ渡して帰った。
厚意で誘ってもらったのに自分の都合で気持ち悪くなるなんて申し訳ないことをしたと思った。